img 「止めハンドル」による連続走行軌跡図の作画方法について(トラックの場合)

1)「止めハンドル」による連続走行軌跡図について

 「止めハンドル」(止まりハンドル)旋回とは、旋回前にハンドルを切り、据え切りのまま旋回をおこなう方法です。クランク状の狭窄路を走行したり、狭い敷地をUターンする場合など、特に急旋回を行う必要がある場合などに用いる旋回方法です。停止するか停止に近い状態でハンドルを切り、切り終えてから旋回を始めるため、車両が向いている方向とは異なる方向(初期ハンドル角θ方向)に旋回を開始するのが特徴です。
 なお、初期ハンドル角θは下式より求まります。

  これに対し「初期ハンドル角ゼロ旋回」とは、連続したヘアピンカーブを徐行しながら走行する場合のように、ハンドルを切りながらほぼ一定した速度で旋回を行う方法です。本ツール内では、「通常旋回」とも呼んでいます。
車両軌跡図CADツール【Locus Pro】では、これまでの「通常旋回」に加え、「止めハンドル」での連続走行軌跡図を作成する機能を追加しました。この新機能により、様々なシチュエーションに応じた走行軌跡の検討が可能になるものと思います。以下、その作画法をご説明します。

2)「止めハンドル」での連続走行軌跡図の作画方法

次頁の図-Aに示すような「止めハンドル」による単一旋回の場合、屈曲部の車両軌跡は、与条件である車両のホイールベース長L2と旋回半径Rから容易に定めることができます。
ところが、連続旋回ではそう単純にはいきません。連続旋回では図-Bのように、車両方向がIP線方向と一致しない場合が多いためです。これは、直前の屈曲部の影響を受け、車両方向がIP線上に戻る前に次の旋回が始まってしまうためです。
この車両方向とIP線が成す角βは、車両の進行と共に徐々に変化してゆきます。またβは、線形や車体寸法、計算ステップ長などに支配され、始点からの逐次計算で求める以外、軌道上における任意点でのβを求めることは極めて困難です。
しかし、このβを定めることができなければ、屈曲部の旋回要素(BC、EC、O)を定めることはできません。
そこで本ツールでは、屈曲部の旋回要素(BC、EC、O)を、下記の繰り返し計算手法により求めています。

下図は、<BP> - <IP.1> - <IP.2> - <EP>の4点からなる線形上を、ホイールベース長L2の車両が、旋回半径R1(R2)で止めハンドル旋回する場合の軌跡図です。
図中の青線矩形は、<IP2>の屈曲部を旋回する直前(BC点上)の車両位置を示したものです。このとき車両方向線は、<IP1>旋回の影響のため、IP1-IP2線に対してある角度(β)を成しています。またβは、車両の進行につれて変化してゆきます。
ここで、屈曲部(IP2)における旋回開始点(BC2)並びに旋回要素(O,EC2)は、次頁のフローチャートの手順により求めることができます。



3)特殊なケースでの旋回軌跡について

 「止めハンドル」での連続旋回では、下図の様に、曲線部の存在しない「折れ」形状となる場合があります。これは、前頁フローチャートにおける赤枠破線の場合に生じ、車両はIP点で屈曲走行することになります。解りやすく言えば、IP2の点がBC点でもありEC点でもあるということです。
通常の車両走行では、このように進行中に突然「屈曲する(折れる)」ことなどないのですが、車両を停止もしくは殆ど停止状態でハンドルを切り据えてから進む「止めハンドル」旋回だからこそ可能な線形と言えます。


 

img 「止めハンドル」による連続走行軌跡図の作画方法について(セミトレーラの場合)
 セミトレーラの場合、トラクタ部の旋回方法は、前述のトラックの旋回方法と同じです(2-1-2.参照)。
一方、トレーラ部の旋回については、単一旋回及びハンドル角ゼロ旋回(通常旋回)と同じ要領で作画します。トレーラ部は、単に前方のトラクタ部とキングピンで連結されているだけですので、キングピンの位置さえ判明すれば、トレーラの軌跡を作図することが可能なためです。
下図は、セミトレーラにおける止めハンドル連続旋回の作図例です。IP.2とIP.4について止めハンドル旋回させたものですが、このように通常旋回と止めハンドル旋回を混在した軌跡図を作図することも可能です。